乳がんの患者様へ

乳がんの患者様へ

「乳がん」と診断されて、治療前に採卵、卵子(胚)の凍結保存を希望される患者様へ

乳がんが判明して、さぞかしご心痛のことと存じます。
ご心労に対して心よりご同情申し上げます。
そしてあなた様が希望される卵子(胚)の凍結保存を通して、あなた様の将来に対する不安の一つが少しでも緩和されることを願っております。

今後の乳がんの治療では、手術、放射線治療、抗ガン剤による化学療法などがありますが、治療内容によっては生殖機能、特に卵巣機能が損なわれることが考えられます。
あなた様の生殖機能への影響が懸念される場合には、その予防策を考えることが重要です。
つまり、将来の妊娠に備えて卵子を凍結して保存しておくこと、あるいは同時に卵巣を一部切除してそれを凍結して保存しておくことが上げられます。

「卵巣機能への影響が恒久的なもの、つまり閉経状態となってしまう治療」、「卵巣機能の低下が長期に渡るかもしれないけれど回復は可能である治療」があります。
あなた様の治療内容がいずれに当たるのかにより対策も変わってきます。
そのどちらに当たる治療を受けることになるのかは、主治医の先生にお尋ね下さい。

特に「恒久的に卵巣機能が失われる可能がある治療」をお受けになる場合は、卵子の凍結だけでなく、卵巣組織の凍結保存も考慮して下さい。
卵巣組織の凍結保存は一部の大学病院で行われております。
但し、将来卵巣を再移植することで乳がんへの悪影響が懸念されるようであれば、この方法は適応にはなりません。
卵子の凍結のみになります。

「卵巣機能の低下が長期間に渡る治療」をお受けになる場合には卵子(胚)の凍結が行われます。
その理由として、がんの治療が長くなると(5年間など)、その間に卵巣が年を取ってしまい、質の良い卵子が減ってしまうことが懸念されるからです。
一般的にヒトが妊娠する可能性は年齢を重ねるに従い低下します。
特に35才から急に妊娠する能力が低下し、40才を過ぎると更に低下していきます。
日本で不妊患者さんでの体外受精胚移植の成功率(移植当たりの妊娠率)は35才で25%程度、40才を越えると15%と低下します。
45才では5%を切ってしまいます。
これは年齢によって卵子の質が低下することを意味しています。
不妊症の患者さんのデータですので、あなた様の卵子や胚に当てはまるデータではないのですが参考にして下さい。
ちなみに、子宮は年齢を重ねてもあまり機能の低下はおこりませんので、今回は子宮に対してはあまり心配なさらなくてもよいと思います。
当院では卵子(胚)の凍結を行います。
現在当院では保存期間やスペースの都合上結婚された方の卵子(胚)のみをお預かりしております。
未受精卵のままの凍結も行いますが、受精卵(胚)の凍結をご希望の場合には、採卵当日にご主人に精液を提出いただき、受精をさせて受精卵(胚)の状態で凍結いたします。
今は未受精卵でも凍結融解後に戻ってくる可能性は大分良くなりましたが、まだ受精卵の方が元気に戻ってくる可能性が高いのが現実です。
そして、もし精子に受精障害があった場合には、将来妊娠を謀ろうと、折角未受精卵を融解して媒精(精子と卵子を一緒にしてあげて受精を試みること)したのに受精しないという状況も予想されますので、余裕があれば受精することまで確認した段階で凍結することをお勧めします。
先程もお話しましたが、未受精卵での凍結も可能です、どちらになさるのかはご夫婦でよく話し合ってからお決めいただきます。

採卵について

成熟した卵子を卵巣から採取することを採卵といいます。
採卵にはいくつかの方法がありメリット・デメリットがあります。
また乳がんへの影響を考えてどのような採卵方法にするのかを選択します。

(1)自然排卵周期による採卵
(2)排卵誘発剤の内服による採卵
(3)排卵誘発剤を注射による採卵

採卵できる卵子の数は(3)>(2)>(1)の順に多くなります。
できれば沢山の卵子が獲得できる(3)を行いたいのですが、この方法では卵巣から卵胞ホルモン、黄体ホルモンという卵巣ホルモンが多量に作られますので、乳がんに対して悪影響を及ぼす可能性があります。
(1)の方法では育つ卵胞(卵子が入った袋)は一つになります。
従って先ほど述べた卵巣ホルモンはあまり高くはなりません。
ただし、採卵できる卵子は1つになります。
(2)はその中間になります。
卵胞に針を刺して卵子を採取しますが、一つの卵胞から採卵できる確率は70~80%です。
従って、育つ卵胞数が少ないとその周期には卵子が獲得できない可能性があります。
どの採卵方法を選ぶのかは乳がんを治療する主治医の先生と相談して決めることになります。
乳がんの治療が最優先ですので、その予後に悪い影響がでる方法は避けるべきであると当院では考えております。

当院では以下の条件に同意いただける方に対して卵子(胚)の凍結保存を行わせていただいております。

  • 結婚していること
  • 肉親の方かつ配偶者の方の同意が得られていること
  • 治療が終わり、主治医の許可が出たら直ぐに治療に入ることができること
  • 保管期間は(生殖年齢を超えない)50才までであること
  • (体外受精の成功率と治療開始の時期等を考慮し) 採卵年齢が43才までであること

以上をよくご理解いただき、採卵については十分にご検討いただければ幸いです。
受診に際しては電話でご予約をお取り下さい。
早急に採卵に入るために、「乳がんの患者さまで卵子凍結を希望される。」旨を電話でお伝え下さい。

Copyright © 2015 WOMEN'S CLINIC OIZUMIGAKUEN. All Rights Reserved.